総務省の調査によると、2016年の時点で日本における高齢者の割合は27.3%となっており、これは先進国の中でも高い数字です。そのような中で在宅医療の形態も変化しています。在宅医療の現状と今後の課題について、詳しく見ていきましょう。
在宅医療とは患者さんが日常生活を営んでいる自宅に医師が訪問して医療サービスを提供することです。また、自宅以外にも老人ホームなどの高齢者施設への訪問も含まれます。高齢者を対象としているイメージが強いかもしれませんが、重度の障害を持ち自宅や施設から外出することが難しい人も対象となります。今までの日本では在宅医療はそれほど一般的なものではなく、先進国の中では低い水準でした。患者さんが死亡した場所に関するデータを見てみると、日本では死亡時に病院にいた割合が81%であるのに対し、在宅医療先進国のオランダやスウェーデンでは35~45%ほどにとどまっています。日本は海外と違って最期まで自宅で医療を受けられるような環境がなかったのです。
訪問介護や訪問看護を利用している人は多いかと思います。しかし、在宅医療はこれらのサービスとは大きく異なります。明確な違いとして挙げられるのは、「医師が診断をしてくれるかどうか」です。また、従来の往診では「診察はするものの治療は病院で行わなければならない」ケースが多かったのです。在宅医療が広く普及した現在は、必要な設備を用意した上で自宅でも治療を受けられるようになりました。
日本は平均寿命が非常に長い国です。平均寿命が伸びたのは、医療技術や医療制度が他国よりも進んでいるためです。一方で、延命措置を重視しているため患者さん本人やご家族の負担が大きいという問題がありました。今後、さらに需要が伸びていくことが予想される在宅医療において重要なのは「QOLの向上」です。自宅にいながら必要とする医療行為を受けることにより、極力負担を減らした上で患者さん本人が自分らしい生活を送れるようになっていくでしょう。通院という作業がなくなるため、介護をするご家族の負担も大幅に減ります。
病院への通院がなくなることは本人だけでなくご家族にとっても大きなメリットです。しかしその一方で、日常生活のサポートという別の負担が発生します。今後は訪問介護や訪問看護などの他業種が連携し、患者さんとご家族を支援していく体制を強化していかなければなりません。今後も増え続ける在宅医療において重要なのは、患者さんとそのご家族双方を支援していける環境の整備です。